aikokimura’s diary

私は鍼師で視覚障害を持っております

たび「イタリア⑤シチリアの絵 エトナ山の鼓動 ブルカーノ島」

私がイタリアに行った時、鍼を頼まれて、シチリアの画家であるマリア様のアトリエにも何度か伺いました。三度目の時は自宅にも招かれ、ランチをごちそうになりました。

私は絵が好きですので、お話しながら彼女が描いた何十枚もの絵に手をかざして、10枚位、良いと感じた絵を「良い」と申し上げました。マリア様はその内のシチリアの海の風景画を1枚下さいました。

とても大きいサイズでしたが、帰りの飛行機では、係の方が特別に預かって下さり、乗り換えの時にはガイドの方が持って下さいましたので、大事に日本に持って来られました。

ところが、日本は湿気があるので、せっかく頂いた額は傷んでしまいました。銀座のイトウヤさんで代わりを探しましたが合うものはなく、我が家が取引のある松屋の画廊でガラスのケースを誂えてもらいました。

頂いた絵は、今も木村治療院の待合室に飾ってあります。患者様からは「自然な絵ですね」とよく言われます。マリア様に感謝です。

その後、イタリアから連絡があって、私が選んだ絵の中の1枚がイタリア全土で3位になったと喜んで下さっていました。

 

エトナさいとうは本当に火山を愛し、私が夏休みにカターニャに行く度に、一緒にエトナ山を登らされました。当時、3333メートルのエトナ山は、優しい女性の山。有名なベスビオ山は、男性の山だそうです。

エトナ山麓の700メートルに住んでいるエトナの家から、有名な火山ガイド、アントニオさんと一緒に登る事が多かったです。アントニオさんは、フランス語は堪能ですが、英語は全くだめでした。でも、山登りには言葉はいらないという事がわかりました。

アントニオさんと繋いだ手の動きで、登り降りる、大変な所、などを感じるのです。彼は世界で3番目の優秀な火山ガイドですから、ガイド料は本当はお高いのでしょうが、エトナと私には、全くのボランティアで案内してくれました。

1900メートルから2500メートル位まではケーブルカーがあって、いろいろなお菓子や絵葉書、キーホルダーなどお土産物も売っていました。何回か伺っている間の火山爆発が起った年には、お店もトイレも全部、無くなってしまいました。

イタリア人は、火山が爆発して、真っ赤に見えてごうごうと音が聞こえると、皆さん喜んでその話をしているようです。イタリア語のわからない私でも喜んでいる様子は感じられました。

彼らは、いつ溶岩で家が流されても良し、火山灰で畑が使えなくなっても良い、また住めるところに移れば良いからと聞きました。本当に自然を愛し、人々も愛し「日々が過ごせて水が飲めれば良い」と言っていました。素晴らしい事です。私にも、夏の別荘にここを買わないかと本気で言ってきました。

シチリアは、アフリカからの風が吹いて来ます、生ぬるい風でした。北半球の風とは違い、重い感じがした事を覚えています。

 

エトナ山の山頂は、とても広く、平らで、私が一人で歩いていても危なくないです。ところが、噴火口に近づくと、亜硫酸の匂いがしてきます。

一度だけ、アントニオさんが、私を噴火口に案内して下さいました。石だらけで、アントニオさんの手のままに足を運び、5メートル位深くに連れて行って頂けました。すごい匂いで息もできませんから、すぐに戻って、深呼吸をしました。良い経験をさせて頂けました。

また、エトナ山が爆発している時に、アントニオさんとイタリアの火山学者と一緒に、ジープで山頂近くまで連れて行って頂きました。研究者しか登ってはいけない時です。

山肌に足を肩幅に開いて置いてみました。エトナさいとうが「エトナ山の心音だよ」と言いました。本当に足底に、ゆっくり、温かさと、たぶん1分間に40回以下の心音を感じました。山にも鼓動があり、生きていると現実に感じたのです。驚くべき体験でした。


エトナはシチリア島の北にある島、ブルカーノにも何人かで連れて行ってくれました。私には英語の使える男性の方をガイドにして下さいました。

メッシーナからフェリーに乗りブルカーノ島に着くと、エトナは「登る前に海に入ろう」と言い、私に水着と体全体を巻ける木綿のスカーフを買わせました。もう一つ、ビーチサンダルも買いました。水着以外は25年たった今でも使えています。

ロッカールームで着替え、海に入りました。なんと温かい海です。初めての経験でした。1時間、温泉の海に浸かって、ドイツ人の女の方と片言英語で話をして楽しい時を過ごしました。

そして、今度は歩いてブルカーノのクレーターへ向かいましたが、行けども行けども着きません。ブルカーノは400メートル程の火山でした。麓から亜硫酸の匂いがして、登る度に噴火口があって、「まるでエトナ山みたい、火山だらけだね」と言ったら、「そうよ、これがブルカーノ(火山)」とエトナから説明されました。

朝から夜までカルテ作りのお手伝いをした私に、彼女はすごいプレゼントをくれました。